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ナシーム・ニコラス・タレブ「反脆弱性」を読んだ

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ナシーム・ニコラス・タレブの「反脆弱性」を読みました。
タレブは「ブラック・スワン」の著者として有名ですが、それ以外にも「まぐれ」などの著作があり、いずれも不確実性/ランダム性がテーマとなっています。
「反脆弱性」も不確実性/ランダム性をテーマに書かれており、著者も「ブラック・スワン」、「まぐれ」と合わせて三部作と位置づけているようです。
前二作は不確実性/ランダム性自体に焦点が合っていたように感じるのですが、この「反脆弱性」は前二作から一歩進んで、不確実性/ランダム性に上手く順応し味方につけることをテーマに、より実践的な内容となっていると感じました。




資産運用において不確実性に対処する方法とは

タレブは不確実性/ランダム性に上手く順応し味方につけることを反脆さと呼び、職業や医療、ウエイトトレーニングなど様々なものを反脆さという視点から見直していきます。もちろん資産運用についても書かれています(タレブ自身はウォール街でトレーダーとして働いていました)。

私自身、金融関係の仕事をしていることもあり、資産運用について書かれている部分は特に興味深く読むことができました。一般的に言っても、資産運用は不確実性の高い状況のなかで意思決定をしなくてはならないものの最たる例だと感じます。

資産運用において不確実性に対処する方法を考えるとき、二つの方法がすぐに思いつきます。 ひとつめは、リスクをあまり取りたくない人はリスクが低い金融商品、高いリスクを取りたければリスクが高い金融商品といった具合に、購入する金融商品を変えることで不確実性に対処する方法です。

もうひとつの方法は、タレブが言うところのエクスポージャー(露出)を調整するという方法で、リスクのある金融商品への投資額を増減することで不確実性に対処するという方法です。当然のことながらリスクのある金融商品への投資額が多ければ多いほど不確実性に翻弄される可能性が高まります。

タレブ自身は重大で希少な出来事のリスクを計算すること自体無理であると断じています。タレブの言うように個々の金融商品のリスクが測定できないとすれば、前者の方法をつかうことはできません。なので、タレブはエクスポージャーを調整する後者の方法により不確実性に対処するべきと説いています。

手数料の側面から考えてみる

私はタレブの考えに全面的に賛成するわけではありませんが、後者のエクスポージャーを調整するという方法を知っておくことは非常に大事だと思います。

100万円の余裕資金があり投資を考えているAさんを例に二つの方法を見てみます。

・自分の望むリスク水準と感じる金融商品を見つけたので100万円分購入した(金融商品自体で不確実性に対処する方法)

・ある金融商品を気に入った。しかし、ややリスクが高いと感じたので100万円のうち30万円分購入し、残りの70万円は投資せずに保有し続けた(エクスポージャーを調整し不確実性に対処する方法)

これだけ見れば、どちらの方法を採用しても上手く不確実性に対処しており大差無いように感じます。しかし、実際に金融商品のセールスの現場では前者のような金融商品自体で不確実性に対処する方法での提案がほとんどです。顧客に投資資金があれば、その全額をなんらかの金融商品購入に振り向けようとします。なぜでしょうか。

それは金融商品を売る側にとって、手数料こそ利益の源泉だからです。前者の方法では全額購入するので100万円分にまるまる手数料が掛かります。一方、後者の方法では30万円分にしか手数料が掛かりません。セールスする側にとって旨味のある提案とは前者の方法なのです。

逆に、金融商品を購入する私達の視点から考えると手数料はマイナスのリターン以外の何者でもありません。手数料をできるだけ小さくするためにも、エクスポージャーを調整するという方法を選択肢として持っておくことは大切なことでしょう。

さいごに

最後は手数料というしみったれた話になってしまいましたが、本書「反脆弱性」は資産運用以外にも様々なテーマについて書かれています。
タレブの語り口は独特で、また本書も上下巻合わせておよそ800ページとかなりのボリュームなので気軽にどうぞとは言えませんが、興味を持たれた方は是非!